2012年3月3日土曜日

J1主審をクラスタ分析してみた(主審の研究)

エルゴラ選手名鑑に主審のデータが掲載されていたので、つねづね思っていた疑問を分析してみた。
その疑問とは、「主審の上手・下手って定量化できるのではないだろうか」

手元にあるデータは、エルゴラ選手名鑑(2012年版)。ここに掲載されているデータは、「1級登録年度」、「担当試合数」、「2011シーズンのカード枚数、担当試合数、PK回数」など。

表 主審の主なデータ 
イエローカード、レッドカード、PKは1試合あたりの数値

このデータから上手い審判の条件を設定する。

試合を円滑にコントロールするためには、カードに頼らず選手と上手にコミュニケーションを取れること。すなわち、上手い審判は「1試合あたりのカード枚数が少ない」だろう(条件1)

試合経験を重ねるごとに主審の技量は上達していくに違いない。すなわち、上手い審判は「通算試合数が多いこと」(条件2)
(通算試合数が多いというのはリーグにも信頼されているはず)


図1は通算試合数と昨シーズンの1試合あたりのイエローカード枚数をプロットしたもの。
通算試合数が多いほど、1試合あたりの枚数が減る傾向がみられる。相関係数0.5なのでまあまあの関係性である。

ワールドカップ3位決定戦を裁いた西村雄一を最も実力のある審判とするならば、カード枚数が少ない審判は上手い審判といえるだろう。



図1 通算試合数と1試合あたりのカード枚数



試合ごとにプレーの荒さが大きく違わないとすれば、主審により1試合あたりのカード枚数が倍になるのは、主審の性質によるものと考えられる。その性質をクラスタ分析によって分類してみた。

図2に「通算試合数」、「1試合あたりのイエローカード枚数」、「1試合あたりのPK数」により、クラスタ分析を行った結果を示す。結果は1~7のクラスタに整理した。

図2 主審のクラスタ分析結果


第1クラスタは「経験が少なく、1試合あたりのカード枚数が多い」
第2クラスタは「経験は少ないが、1試合あたりのカード枚数が少ない」
第3クラスタは「経験は多いが、1試合あたりのカード枚数が少ない」
第4クラスタは「とにかく1試合あたりのPKが多い]
第5クラスタは「 経験が多く、1試合あたりのカード枚数が少ない ]
第6クラスタ、吉田寿光氏は孤高の存在。


西村、松村が属する第5クラスタは上手い審判といえるだろう。ここに高山はまだしも、東城が入ったことに驚いたが、彼に対する先入観を変えなければいけないようだ。広瀬についてはJ1ではまだ34試合と担当した試合が少ないことから、ジャッジに印象に残っていない。今シーズン注目してみよう。

第3クラスタには神戸サポからすると最悪の印象がある村上が含まれる。経験試合数が多いにもかかわらず、カード枚数が多いのはもはやスタイル変更の余地がないのかもしれない。
(ただし、扇谷については提示したイエローカードのうち20%が遅延に対するものであるため、インプレーのカードだけ集計して分析すると評価が変わるかもしれない)

第4クラスタの家本は1試合あたりのカード枚数は西村、松村についで少ないものの、PK数が突出して多い。佐藤隆治については、カード枚数、PK数ともに多く、試合が荒れる可能性が高い傾向にある。

定量的に分析してみたところ、主審個人の特性は明らかに存在することが分かった。願わくば、その特性が試合を壊すことがないように。また、今シーズンの観戦のお役に立てば幸いです。